『歌われなかった海賊へ』を読んだ。
ナチス政権が倒れる直前直後の物語だった。主要人物たちは10代前半。各々何らかの理由でドイツ少国民団に馴染めなかった、離れた若者らがほとんど。
彼らが行動を共にするのはエーデルヴァイス海賊団。主な活動場所は陸。楽しく生きるためのグループ。高尚な目的はない。
『・・・・・エーデルヴァイス海賊団、大胆不敵にもヒトラー・ユーゲントに戦いを挑み、レジスタンスとして戦う彼らは今や、ドイツにおける唯一の民主化勢力といっても過言ではありません。ナチス独裁体制を打倒すべく、自由と民主主義の理想に向けて戦う彼らの徽章は、その名の通りエーデルヴァイス。彼ら若き自由の戦士の存在は、ナチスの独裁者にとっては忌々しいものでありますが、ドイツ人にとっては希望であります。そして彼らは、戦後ドイツの隣を築いていくことでしょう!」
(中略)
唐突に、リアが吹き出し、そのまま声を上げて笑い始めた。ヴァルディが続き、それを見ていたヴェルナーも笑い出した。やがてその場の全員が笑い出し、ロ々に先ほどの放送で聞き取った語句を反復した。
「俺たちがレジスタンスだって」
「違う」
「私たちは民主化勢力だっけ」
「まったく違う」
「戦後ドイツの礎になるの?」
「なるわけない」
ロ々に笑うことで、彼らが安心していることが、ヴェルナーには分かった。俺たちは、そんなものじゃない。
ひとしきり笑ったあと、リアはヴァルディにラジオ放送を消させた。
笑い声も途絶えると、また元の静けさに包まれた。
ベティが、ぽつりと呟いた。
「私たちはそんなんじゃないのに、どうしてみんな、自分の都合で分かろうとするんだろうね」
ナチスの思惑から外れた道で生きる彼らは傍から見たらレジスタンスなんだろうな。私もそう思ってたし(←ちゃんと読め)
歌う海賊も、歌わなかった市民も、嘘の供述を書かせようとした高官も、目的は生きることだった。
去年までのご時世だったらもっと違う思いで読んでいたんだろうな。
